春のこの香りの記憶は数十年前に遡る。夜遅く辿りついたシカゴのホテルで桜餅のいい香りを感じ取ったことがあったのだ。その香りのもとは桜餅ではなく、Half and Halfというパイプ煙草だった。それにしても桜餅の香りだったのだ。洒落た香りの煙草だとそのあと紙巻をすってみたが、紙巻の味はたいしたことなかったように記憶している。吸う本人ではなく周りの香りが良いのだ。今夜の食後、久しぶりにこの香りに接した。真っ先に思い出したのは、シカゴである。真っ先に桜の風情や情緒に思いを馳せない所がアマノジャクである。