雛祭りというと蛤が出てくる。正確に言うと、蛤のお吸い物が出てくる。もちろん、散らし寿司などがあってのことだが、お吸い物はというと蛤になる。蜆や浅蜊ではない。蛤である。確かに豪華になる。もっとも正倉院の御物にも蛤の貝あわせがあるくらいだから、古式ゆかしい日本の食べ物であることに違いはない。しかし、である。この蛤は中国産と表記されていた。迂回輸入の気配は濃厚であるが、それはどうでもいい。どことなく貝の文様にも風格が感じられないのは気のせいだろうか。国産蛤は望むべくもないらしい。まことに残念である。日本の風物は年々変質していく。