大阪から生駒山を越えて大和の国に入りますとな、山の向こうにもう一つ谷田丘陵言う丘がありましてな、この丘から西の方を眺めますと、暗がり峠いうて、昔からある大和への街道の峠越えのところがよう見えますねん。
生駒谷いうてな、平城京に入る手前の起伏のあるところやねん。この辺から都に通勤しとったお役人もおったんやろなぁ。
陽の沈む頃合になるとな、辺りがだんだん暗うなってな、なかなか趣のあるところですねん。
春は彩りのある夕暮れやねえ、桜が夕陽に映えるのも、なかなかええやんか。
三笠の山に出し月もええねんけどな、ここかて大和の国やからまぁ、似たようなもんや。
その昔、唐の国から月日をかけて船で大阪に着いて大和の国に来はった坊さんも、ここで月見たら、さぞかし詩的な気分やったやろなぁ思います。
夕暮れの白い月は、静かなところで見なあかん。街中で見る月とは一味も二味も違いまっせぇ。大和の国の静けさはえぇなぁ。